「病院に行くたびに大暴れ」「キャリーに入るのも嫌がる」──猫の通院ストレスで悩んでいませんか?
実は、病院選びのコツを押さえるだけで、猫ちゃんも飼い主さんも負担が減ります。
20年の現場経験を持つ元動物看護師が、猫に優しい病院の見極め方をわかりやすく解説します。
猫飼い初心者が動物病院を選ぶ前に知っておきたいこと
なぜ猫は病院選びが重要なのか。
そのため、外出だけでも不安は大きく、病院で診察となると不安と緊張で暴れたり、体調を崩してしまうことも少なくありません。
だからこそ早期発見・早期治療をサポートしてくれる信頼できる動物病院が必要不可欠です。
そこで猫ちゃん専門病院でなくとも、「猫ちゃんにやさしい、猫ちゃんのことをよく理解している病院」が重要です。
さらに、猫ちゃんとわんちゃんではかかりやすい病気が異なるため、猫ちゃんの診療経験が豊富な獣医師であれば的確な診察やアドバイスが期待できます。
つまり、猫ちゃんの性格や特性を理解し、それに対応できる病院を選ぶことは、猫ちゃんの健康を守る上で非常に重要なステップです。
病院選びのNG行為
動物病院選びのやりがちなNG行為をいくつか紹介します。
①“初診で合わないと感じてもそのまま通い続ける”
一度診察を受けて、猫ちゃんの様子や獣医師・スタッフの対応に違和感を感じた場合は、無理に通い続ける必要はありません。
複数の病院を試してみて「ここなら安心して愛猫を任せられる」と思えるところを選びましょう。
②“病院の雰囲気や清潔感をチェックしない”
待合室や診察室が汚れていたり、臭いがきつい、スタッフがバタバタしている…そんな病院は診療の質も不安が残ります。
施設の清潔さや落ち着いた雰囲気は猫ちゃんのストレスを減らすだけでなく、信頼性の指標にもなります。
③“犬の飼い主さんからのおすすめで病院を選ぶ”
獣医師にも得意不得意や興味の範囲があります。実際に、わんちゃんに関してはスペシャリストと呼ばれる獣医師でも猫ちゃんに関しては一般的な知識しか持っていない、ということもあります。
④“猫専用または猫にやさしい病院を探さない”
前述のように、猫ちゃんは外的要因でストレスを抱えやすい動物です。わんちゃんと同じ空間にいるだけでも大きなストレスを感じる猫ちゃんはたくさんいます。
できるだけ猫ちゃんに配慮した病院を探しましょう。
猫飼い初診者さんこそ「なんとなく」で選ばず、愛猫の立場に立った視点で病院を選ぶ意識を持つことが、結果愛猫の健康寿命を延ばすことにつながります。
良い動物病院の見分け方
キャットフレンドリークリニック(CFC)認定をチェックする
キャットフレンドリークリニックとは国際猫医療団体が定めた「猫にとって快適でストレスのない医療環境」が整った病院に与えられる認定です。
魅力的なポイント
- 猫ちゃん専用の待合室、猫ちゃん専用の診察室など、猫ちゃん特有のストレスを軽減する工夫がされている
- 猫ちゃんの扱いに慣れた獣医師・スタッフが在籍し、適切なハンドリング技術を持つ
- 待ち時間も猫ちゃんが落ち着けるよう、照明や香り、音への配慮がされている
飼い主から見てのメリット
- 初めて連れて行く場合でも「猫ちゃんにとって安心できる環境」が整っていることがわかりやすい
- CFC認定があることで、信頼できるクオリティの保証と判断しやすくなる
- ネガティブな経験を減らし、愛猫も飼い主も診察にストレスを感じることなく気軽に受診ができるようになる(早期発見・早期治療につながる)
CFC認定病院かどうか調べる方法
↑全国のキャットフレンドリークリニックが調べられますのでこちらでチェックしてみてください。
病院のホームページ等で記載がある場合もあります。
※CFC認定は一つの目安です。実際に受診してみて雰囲気や清潔感、対応等が愛猫に合うかどうかを確認しましょう。
スタッフの対応や雰囲気をチェックする
病院を選ぶうえで、スタッフの対応や院内の雰囲気はとても重要です。
獣医師の腕前はもちろんのこと、他のスタッフの態度や接し方などからもその病院の「猫ちゃんへの理解度」が見えてきます。
例えば、大きな声や音で刺激しないよう配慮しているか、キャリー越しの観察や問診で接触を最低限にしているか等、小さな気配りの積み重ねが猫ちゃんにとっては大きな安心につながります。
通いやすさと診察時間の確認も大切
病院選びでは「内容重視」が大切とはいえ、通いやすさも軽視できません。
診療時間や定休日なども考慮しておきましょう。
特に以下のようなポイントが重要です。
- 徒歩や車、自転車など自分の生活にあったアクセスが可能か
- 車の場合、駐車場の有無
- 予約制か、急患対応が可能か
- 平日夜や土日も診察しているか
また移動自体がストレスになるので自宅から30分圏内で通える範囲が理想的です。
万が一のとき「すぐに診てもらえるかかりつけ医」があるかどうかで猫ちゃんの命が左右されることがあります。
実際、筆者が勤めていた病院は設備が整っていたため、遠方から通ってこられる方がたくさんいらっしゃいました。しかし病気の重さによっては自宅の近くにもかかりつけ医をもっておくことをお勧めしていました。
そして高齢になるとほとんどと言っていいほどたくさんの猫ちゃんが腎臓病になります。
腎臓が悪くなると頻繁に(多いと毎日)点滴をしなければならないことがあります。
そういう場合、自宅近くにかかりつけ医があると日々の維持管理をしてもらえるので本当に心強いです。
動物病院を選ぶ具体的なステップ
猫飼い初心者さんにとって動物病院を選ぶのは不安なものです。
でも情報を集め、実際に体験して比較することで「ここだ!」と思える病院に出会える可能性が高まります。
この章では信頼できる病院に出会うための具体的なステップをご紹介します。
口コミ・レビューサイトの使い方
病院選びの第一歩は「情報収集」。
その中でも実際に通院した飼い主さんの声が集まる口コミやレビューサイトはとても参考になります。
これらを利用する際には星の数よりもコメント内容に注目し、猫ちゃんの診察で訪れた人のレビューを中心に自分のニーズに合っているか確認してみましょう。
実際に初診を受けてみる
ネットで調べるだけではわからないのがその病院の「空気感」。
そのために実際に一度診察を受けてみることをおすすめします。
【チェックポイント】
- 待合室の犬猫エリア分離の有無
- スタッフの対応
- 診察時の猫ちゃんの扱い方
- 院内の清潔感、消毒や換気の状態
- 飼い主への説明のわかりやすさ
愛猫がどう反応するか、自分が安心して任せられそうかを見極めましょう。
待合室での過ごし方の工夫
【猫ちゃんの不安を最小限にする待合室対策】
- キャリーにはタオル等を被せて視界と光を遮る(暗くて狭い空間を好む習性と、自分の姿を隠せている安心感があります)
- 膝の上や椅子の上など、床から少し高い位置にキャリーを置く(床の振動や犬の視線を避ける)
- キャリー内にはいつも使っているタオルや毛布を入れて安心感を与える
- 香りで落ち着かせる“フェリウェイスプレー(猫用フェロモン)”をキャリーやタオルに軽く吹きかけておく(※動物病院で購入できます)
- 大きな声や音はなるべく控える
また、キャットフレンドリークリニックのように、猫ちゃん専用待合室がある病院では、他の動物との接触を避けられるので理想的です。
病院によっては順番が来るまで車で待機することも可能なのでスタッフに確認してみましょう。
「病院=怖くない」と猫ちゃんに少しずつ学んでもらうことで、今後の通院がぐんと楽になりますよ。
かかりつけ病院をもつメリット
「病院は調子が悪くなったときに行けばいい」と考えていませんか?
体調を崩してから慌てて病院を探すよりも、健康なうちから信頼できる“かかりつけ医”をもっておくことが、安心と健康を守る鍵になります。
ここでは猫飼い初心者さんにこそ知ってほしい“かかりつけ医をもつメリット”を2つの観点から解説します。
緊急時にもすぐに相談できる安心感
猫ちゃんは体調不良を隠す動物です。
気がついたときにはすでに症状が進行していることも少なくありません。
そのため、体調の異変に気づいたときにすぐ相談できる“かかりつけ医”の存在は非常に重要です。
信頼関係が築けていれば以下のようなメリットがあります。
- 普段の様子を知っているため、わずかな異変にも気づいてもらえる
- 電話での相談に応じてくれる(※病院によるため要確認)
- 過去の診療履歴があるので診断や処方がスムーズ
病院側にとっても、カルテ(過去の情報)があると対応がしやすく、迅速な判断・処置が可能になります。
“愛猫のことをわかってくれている先生がいる”というだけでとても心強いものです。
継続的な健康管理がしやすくなる
猫ちゃんはいつまでも愛くるしい姿のため、年齢の変化がわかりづらく、シニア期に入っても元気そうに変わらないように見えることがありますが、実際には腎臓病や歯周病など、年齢とともに進行する慢性疾患が多くあります。
定期的に健康診断を受けることで、こうした病気を早期発見できる可能性が高くなります。
特にかかりつけ医がいれば
- 前回との体重・血液検査などを比較し、変化を把握してもらえる
- 食生活や性格をふまえた個別のアドバイスがもらえる
また猫ちゃんは“健康そうに見えても検査で異常が見つかる”ことがとても多いため、健康なときこそかかりつけ病院を活用するのがポイントです。
特にシニア期(7歳以上)に入った猫ちゃんは、半年〜年1回の健康チェックが理想とされています。
こんな症状があればすぐ病院へ
以下のような症状がみられた場合は、できるだけ早く病院に連れて行くべきサインです。
特に猫ちゃんは“我慢強い動物”なので異常が見える時点で症状が進行している可能性があります。
【要注意の症状一覧】
- ご飯を食べない、水を飲まない
- トイレに行く回数が多い/少ない
- 血尿・下痢・嘔吐が続く
- 呼吸が荒い、口を開けて呼吸している
- 急に元気がなくなった、動かない
- 歯茎の色が白っぽい/黄色い
- どこかを触ると嫌がる、怒る、鳴く
- 体が熱い
これらの異変にいち早く気づけるよう、日頃から“いつも通り”をしっかり観察しておくことが大切です。
何か少しでも「変だな」「いつもと違う」と感じたら迷わず、かかりつけ医に相談しましょう。
経験上、いつも一緒にいる飼い主さんの“違和感”はとてもよく当たります。
もしも病院に行ってみて異常がなかったとしても全然大丈夫です。ずっと不安な気持ちを抱えながら様子を見ているよりも“安心”を手に入れましょう。
「こんなことで病院に行ったら迷惑かな、嫌がられるかな」など考える必要はありませんよ。不安な場合は電話で相談してみましょう。親身になってくれるはずですよ。
まとめ:猫飼い初心者こそ、信頼できる動物病院との出会いが大切
猫ちゃんとの暮らしを始めたばかりの方にとって、動物病院選びは「よくわからない」「どこがいいの?」と悩む大きなポイントです。
しかし猫ちゃんは言葉で不調を訴えることができず、病気を隠す傾向がある動物。
だからこそ、早い段階で“信頼できる動物病院=かかりつけ医”を見つけておくことが、猫ちゃんの健康と飼い主さんの安心につながります。
猫ちゃんの特性を理解し、猫ちゃんに優しい環境が整った“キャットフレンドリークリニック(CFC)”認定病院などを優先的に検討することで、ストレスの少ない通院が可能になります。
また病院の雰囲気、スタッフの対応、設備や清潔感、実際に通いやすいかどうかなど、複数の観点から比較して選ぶことが大切です。
初診での印象や、実際に通っている方の意見などを参考に、猫ちゃんと飼い主さんにとって最適な病院を見つけましょう。
愛猫の一生を支える“パートナー”のひとつとして、“良い病院”との出会いを大切にしてください。
通院に欠かせない、キャリーケースの選び方はこちら。
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