犬と猫、どちらを選ぶか。
どっちもかわいい!どっちも好き!!
だからこそ選べないーっ!!
悩ましい問題ですよね。
動物病院で20年間動物看護師として勤めた経験から、どちらの良さも大変なところもたくさん見てきました。
この記事では、性格・お世話・費用などあらゆる観点から犬と猫を比較。
ペット選びのために、実体験を含めた信頼できる情報をお届けします。
飼いやすさって何?
職業柄、友人などに「犬と猫、どっちが飼いやすい?」と聞かれることがよくあります。
難しすぎる質問です…🫠
飼いやすさは、ペットの性格やお世話の内容だけでなく、飼い主の性格・ライフスタイル・住環境などにも大きく左右されるからです。
例えば、時間にゆとりがあり、毎日散歩に行ける人にとっては犬のお世話も苦にならないでしょう。
一方で、仕事や育児で忙しく、時間に余裕がない人には、猫のように自立した動物の方が向いているでしょう。
また、集合住宅か戸建てか、子どもがいるかいないか、将来的な引越しの可能性なども考える必要があります。
犬は吠える子も多いため、集合住宅では気を使う場面が多いでしょう。
逆に猫は爪とぎへの対応が必要になるため、賃貸では不安があります。
このように、“飼いやすさ=自分にとって無理なく続けられるかどうか”であり、犬・猫どちらが“万人にとって楽”ということはありません。
大切なのは、自分にとって“苦ではないこと”“楽しいと感じられること”が何かを知ることです。
私はずっと「犬の方が愛情深いし、かわいいし…絶対犬!」と思っていました。
今でも犬が大好きです。どちらかと言ったら犬派です。
でも自分の生活と照らし合わせると、子育てをしながら毎日の散歩はできるか、しつけに時間をかけられるか、トリミングに月一回ほどのペースで連れていけるか…。
生活スタイルを考えたときに犬を全力でしあわせにしてあげられる自信がありませんでした。
時間も費用も猫より犬の方がかかることが多いので考えに考えた結果、猫を迎えることにしました。
「飼いやすさ」というのは、“自分の生活と合っているかどうか”という視点で考えることが大切です。
犬に向いている生活スタイル
犬は人と一緒に行動することが好きで、飼い主との絆を強く求める動物です。
そのため、以下のような生活スタイルの人には犬が向いているでしょう。
- 毎日時間に余裕があり、散歩や遊びの時間が取れる
- 在宅時間が比較的長く、留守番時間が短い
- アウトドアや運動が好きで、一緒に出かけたい
- しつけやコミュニケーションを楽しめる
特に子犬の時期はしつけが重要で、甘噛み、むだ吠え、トイレトレーニングなどに対応する必要があります。
そして犬種にもよりますが大体1〜2ヶ月ペースでトリミングをする必要があります。
犬はメンテナンスに費用と時間がかかることは覚悟しなければいけません。
猫に向いている生活スタイル
一方で猫は、マイペースで自立した性格をしており、人にべったりするより「必要なときに甘える」スタイルを好みます。
猫が向いているのは次のような人です。
- 忙しくて外出時間が長い、または不規則な生活
- 一人暮らしや共働きなどで家にあまりいない
- 静かで落ち着いた暮らしを好む
- 毎日の散歩が難しい
- 過干渉せず、見守るような接し方が好き
家事や育児、仕事に追われる生活にとって“毎日の散歩が不要”“ご飯とトイレの管理ができていれば猫は快適に暮らせる”という猫のスタイルは、とても魅力的です。
とはいえ猫も完全に手がかからないわけではなく、ブラッシングや爪切り、トイレ掃除、そして定期的な健康チェックも欠かせません。
ただ、“べったり構わなくても満足してくれる”という点では、自分の生活のペースを大きく崩したくない人には向いています。
犬の特徴と魅力
犬は「人に寄り添う動物」として、何千年ものあいだ人間と共に生きてきました。
その歴史からもわかるように、犬は人とのコミュニケーション能力に優れており、忠実で感情表現が豊かです。
ここでは犬の代表的な特徴や魅力について、私自身の経験も交えてご紹介します。
感情を読み取り、寄り添ってくれる存在
犬の最大の魅力は「心に寄り添ってくれること」です。
飼い主の顔色や声のトーンをよく観察し、悲しいときにはそっと寄り添い、嬉しいときには一緒に飛び跳ねて喜んでくれます。
犬派の筆者が思う犬の魅力と言ったら何より表情が豊かなところです。
尻尾での表現もそうですが、顔の表情がとても豊かでわかりやすく、ストレートに感情が伝わってきます。
帰宅した際は全身で喜びを表現してくれますし、落ち込んでいる時にはずっとそばについていてくれます。
とても愛情深い動物だと思います。
そして仕事をしている上で好きだったのが“犬のため息”です。
犬は診察台に上がって看護師が保定し、「あ、言うこと聞かないとだめなときだ」と状況を察知すると深いため息を一つついて受け入れます。
それがなんとも愛おしい❤
そのため息をついたら無駄な抵抗はしません。賢いなぁと思うのと、心が通った瞬間でとても嬉しくなります。
飼い主との心の繋がりが重要
犬は群れで生活する動物のため、飼い主との主従関係や信頼関係をとても大切にします。
一度関係が崩れてしまうとしつけはうまくいかず、トラブルが起こります。
たくさんコミュニケーションをはかり、たくさん関わり、その中で主導権は必ず人間が握るというスタンスを崩さずに関わっていくことが重要です。
そして犬は人間のことが大好きです。
たくさんの関わりを求めているのでそこを満たしてあげる努力は怠ってはいけません。
犬がしあわせになるための主導権は人間にあると思います。なのでリーダとしての責任は重大です。
外に出る習慣ができる=健康的な生活
犬は基本的に毎日散歩が必要です。
運動不足を防ぎ、ストレスを発散するためにも、1日1~2回の散歩が理想です。
これは飼い主にとってもプラスで、「犬がいるから外に出る」「朝の散歩が習慣になった」と生活のリズムが整うという声も多く聞かれます。
しつけや世話には根気が必要
一方で、犬にはトイレトレーニング、吠えグセの抑制、噛み癖の矯正など、しつけが必要です。
特に子犬のうちはイタズラも多く、いろんなものをかじったり、カーペットにおしっこをしたりすることも…。
また、犬は留守番が苦手な子も多く、長時間の不在が続くと不安で吠えたり、物を壊したり、自傷行為をしたり問題行動につながることもあります。
こうした「お世話の手間」も、あらかじめ理解しておくことが大切です。
猫の特徴と魅力
猫はその自由気ままな性格から、「気を遣いすぎなくてもいい距離感」が心地よく、魅力的です。
ここでは、猫の代表的な性格や行動、飼い主として感じた魅力をお伝えします。
基本はマイペース。だけど甘えん坊な一面も
猫は“気まぐれ”とよく言われますが、これは「自分のペースで生きている」という意味でもあります。
誰にも干渉されず、のんびり日向で寝たり、好きなタイミングで遊んだりと、自由なスタイルが魅力的です。
実際に飼ってみると、一人遊びの時間も多く、食事と水、居心地の良い寝床があればなんだか満足そうに見えます。
一緒に遊びたいときはおもちゃを持ってきたり、甘噛みしてきたりしますし、一緒に寝たいときは甘えてきます。
ずっとベッタリでなく、要所要所で関わるくらいが丁度いいという気楽さが最大の魅力だと感じます。
トイレや食事の管理がしやすい
猫はとてもきれい好きな動物です。
トイレもすぐ覚えますし、粗相することがあればそれは飼い主側に何か訴えているときです。(トイレが汚れている、砂が気に入らないなど…)
また、自動給餌機や給水器などを使えば、ある程度の留守番も問題ありません。
散歩も不要で、運動はキャットタワーなどの上下運動ができるものを用意してあげれば室内で十分できます。
忙しい人にとって、猫の“お世話のしやすさ”は大きなポイントです。
散歩やトイレなど日常の世話
犬と猫、どちらを飼うにしても避けられないのが「毎日のお世話」です。
その内容や手間には大きな違いがあります。
ここでは、散歩・トイレ・食事などの基本的なお世話について、それぞれ比較しながら紹介します。
犬のお世話:毎日の散歩は必須
犬にとって散歩は運動のためだけでなく、ストレス解消や社会性を育てるためにも非常に大切です。
大型犬や体を動かすことが大好きな犬種によっては1日2回、30分以上の散歩が必要なこともあります。
お天気に関わらず散歩に行く覚悟が求められます。
また、散歩中には排泄をする犬も多く、マナー袋の持参や排泄物の処理、近隣への配慮なども欠かせません。
散歩のコースやタイミングを考える必要もあり、忙しい人にとっては負担に感じることもあるでしょう。
犬のトイレ:屋外派・室内派がある
犬のトイレは、室内のペットシーツで済ませる「室内派」と、散歩時に外でする「屋外派」に分かれます。
ただし、外でしか排泄できない子にしてしまうと、悪天候や災害時、老後に困るため、できれば室内でもできるようトレーニングしておくのが理想です。
子犬のうちは特に、トイレトレーニングに根気が必要です。
犬は自分で積極的にトイレを覚える動物ではありません。
以前働いていた動物病院の獣医さんで“一切しつけはしない”と決めた獣医さんがいました(変な人🫠)
そこの家の犬たちは歴代どの犬もトイレを覚えませんでした。
小型犬〜大型犬すべて思い思いのところにしていました。
しつけをしなれば犬はどこでもします。
極端な家庭の例でしたが、犬がトイレを覚えるのには時間がかかります。
根気よく教えてあげましょう。
失敗してしまったときも叱らず、場所を覚えるまで褒めて教える努力が求められます。
猫のお世話:基本的に家の中ですべて完結
猫は室内飼いが基本で、散歩の必要はありません。
ストレス発散や運動は、室内での上下運動やおもちゃ遊びで補えます。
また、猫はトイレのしつけがとても簡単です。
砂の入った猫トイレを置いておけば、本能的にそこを使うようになります。
子猫でもすぐに覚える子が多く、失敗はほとんどありません。
筆者の家の猫は4週齢で来ましたが一度も失敗したことがなく、感心しました。
ただし、きれい好きな猫のトイレは毎日清潔を保つ必要があります。
排泄物をそのままにしておくと我慢したり、トイレ外での粗相の原因になることも。
また、室内に排泄するため、ニオイ対策も重要で消臭効果のある猫砂やこまめな掃除が快適な飼育環境を保つポイントです。
食事の世話:犬猫共通のポイントと違い
犬と猫では、食事の内容や与え方も少し異なります。
犬は1日2回が基本で、時間を決めて与えるスタイルが多いです。
一方、猫はもともと狩りをしてその都度食べる動物なので1日3〜4回少量ずつ食べるのが基本です。
そのため、自動給餌器などを利用すると便利です。
このように、日常の世話の内容には大きな違いがあります。
犬は時間や労力がかかる分、濃密な信頼関係が得られますし、
猫は手間が少ない分、自立的な距離感で暮らしやすい存在です。
しつけの難易度
ペットを迎える前にぜひ考えておきたいのが「しつけはどの程度必要か」といった点です。
犬と猫では、この点でも大きな違いがあります。
犬は「人の指示を覚える」方向性、猫は「人の意図を理解して受け入れるかどうかは猫次第」という違いがあります。
トイレトレーニングや無駄吠え、噛み癖のしつけは労力と時間をかけてする必要があるのが犬。
万が一しつけがうまくいかなかった場合、しつけ教室など救済措置も。
一方、生まれ持った性格と本能でほぼ確立されているのが猫。
しつけがほぼ効かないため、人間の生活スタイルとのすり合わせをして歩み寄る、譲り合う(人間が譲る?)スタイルです。
なので“猫は思い通りにいかない”と理解した上で暮らすことが重要です。
初期費用と月々の維持費
「犬と猫、どっちが飼いやすいか」を考えるとき、忘れてはならないのが“お金”の問題です。
ペットを飼うということは、命を預かること。
初期費用はもちろん、毎月の食費や医療費、長期的な出費も含めて考える必要があります。
ここでは、犬と猫それぞれにかかる初期費用と維持費の目安を紹介します。
初期費用:犬の方が高めになりやすい
犬を迎える場合、最初に必要な費用は以下のようなものがあります。
- ペットショップまたはブリーダーでの購入費(10万~30万円以上)
- ケージ・ベッド・食器・リード・首輪・トイレ用品などの用品一式(1~3万円)
- ワクチン・狂犬病予防接種・マイクロチップ登録(2万円前後)
- 去勢・避妊手術(2~5万円前後)
合計すると、初期費用だけで15万〜40万円以上かかることもあります。
一方、猫の場合は次のような初期費用がかかります。
- 猫の譲渡費用または購入費(0~20万円)
- トイレ・猫砂・爪とぎ・キャリーバッグ・食器など(1.5万円〜2万円)
- ワクチン接種・健康診断(5,000円〜1万円程度)
- 去勢・避妊手術(1.5〜3万円)
猫の初期費用は概ね3.5〜25万円程度で、犬よりも抑えられる傾向があります。
維持費(月々の費用):小型犬と猫はほぼ同じくらい
犬と猫の月々の費用は、以下の項目が主です。
- フード代
- トイレ用品(猫砂 or ペットシーツ)
- おもちゃ・消耗品
- ワクチンや健康診断の積立
- ペット保険(任意)
【小型犬・猫の目安】
月3000〜5000円程度(フード代+トイレ+消耗品)
【中〜大型犬の目安】
月5000~10000円程度(フード代+トイレ+消耗品)
中型犬や大型犬になると、フード代や医療費も比例して上がり、月1万円以上かかることもあります。
そして突発的な病気やケガ、高齢期の医療費を考慮すると、長期的な備えが必要です。
見落としがちな“継続費用”も計画に入れる
どちらを選ぶにせよ、「一度買ったら終わり」ではなく、年単位でかかる費用があることを理解しておく必要があります。たとえば:
- ワクチンやフィラリア予防(年1.5〜3万円)
- トリミング(犬の場合、犬種により月5,000〜1万円)
- 老犬・老猫期の介護用品や通院費(加齢によって増加)
- ペットホテルやペットシッター代(旅行・帰省時)1泊5,000円前後が相場
いざという時に預ける環境があるかも大切なチェックポイントです。
病気やシニア期の費用も考慮
ペットを飼ううえで見落とされがちなのが「年をとったあとの費用」や「病気になったときの医療費」です。
特に高齢になると、若い頃とは違って思わぬ出費がかさむことも少なくありません。
犬の医療費は体の大きさで差が出る
犬の医療費は、サイズや犬種によってかなり異なります。
内服薬や予防薬は体重により、量が決まります。
体重が重いとそれだけ必要なおくすり量が増えるのでその分費用がかさみます。
同じ病気でも大型犬と小型犬では倍ほどお薬代に差が出る場合があります。
猫に多い慢性疾患
猫は高齢になると腎臓病になるリスクが高い動物です。
慢性疾患の治療は生涯続くことが多いため、月1万〜3万円以上の継続的な医療費がかかることもあります。
まとめ|犬と猫、どっちを飼うべきか?迷ったときの答え
「犬と猫、飼うならどっちがいい?」
この問いには、たった一つの正解はありません。
犬には、忠実で愛情深く、強い絆を築けるという魅力があります。
毎日の散歩やしつけを通じて、心が通じ合う喜びがあります。
猫には、自立したマイペースな性格と、ふとした瞬間に見せる甘えん坊な一面があります。
忙しい人や、自分の時間を大切にしたい人にとっては、ちょうどよい距離感で寄り添ってくれる存在です。
飼育の手間や費用、しつけの難易度などを比べると、「猫のほうが飼いやすい」と感じる人も多いかもしれません。
しかし、「大変でも毎日一緒に過ごしたい」「絆を深めたい」という人にとっては、犬こそが最良のパートナーです。
だからこそ、判断の軸は「犬がいいか猫がいいか」ではなく、
「今の自分の暮らしに合っているかどうか」です。
最後に大切なことをひとつだけ
どちらを選んでも、ペットは“命”です。
「かわいいから」「癒されたいから」だけでなく、最期まで責任を持ってお世話できるかどうかが、何よりも大切です。
飼う前にしっかり情報を集め、自分のライフスタイルや将来のことまで見据えたうえで、犬か猫かを選びましょう。
あなたにとっても、そしてその子にとっても、幸せな出会いになりますように。
コメント