フィラリアといえばわんちゃんの病気というイメージがありますが、猫ちゃんも感染する可能性がある病気です。
しかも猫ちゃんの場合、治療が難しく、突然死につながるケースも。
この記事では、動物病院の現場経験をもとに、猫ちゃんにおけるフィラリア予防の重要性について詳しくご紹介します。
そもそもフィラリア症って何?
フィラリア(犬糸状虫症)は、蚊によって媒介される寄生虫の一種で、心臓や肺の血管に寄生し、さまざまな健康被害を引き起こす病気です。
一般的には「犬の病気」として知られていますが、実は猫ちゃんにも感染する可能性があります。
フィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)は、感染している動物の血液中に漂い、その血液を吸った蚊が別の動物を刺すことで体内に入り込みます。
猫ちゃんの体内に入ると、多くは成虫になれず死んでしまいますが、それでも猫ちゃんの体内では激しい免疫反応が起こり、深刻な症状を引き起こすことがあります。
特に怖いのは、たった1匹の成虫でも心臓の小さい猫ちゃんにとっては命を脅かすことがあるという点です。
わんちゃんと比べて感染率は低いものの、猫ちゃんは「フィラリアに弱い動物」だと言われています。
また、猫ちゃんのフィラリア症には「突然死」という形で現れることもあり、見た目では気づきにくいという厄介さがあります。
猫ちゃんの突然死の原因の一つ
20年間動物病院に勤務し、猫ちゃんの突然死を目や耳にすることは何度かありました。
原因が見当たらず、『心臓発作だろう』と言われてきました。
しかし近年研究が進み、フィラリア感染が一つの原因となっていることがわかりました。
全部の突然死の原因がフィラリア症ではありませんが、可能性の一つとして考えられるとしたら、それが予防できるのであればしない手はないと思います。
フィラリアの症状
わんちゃんの場合
- 咳
- 息切れ
- 運動不耐性
- 呼吸困難
- 心不全
- 腹水
猫ちゃんの場合
- 咳
- 呼吸困難
- 疲れやすい
- 嘔吐
- 食欲不振
- 体重減少
猫ちゃんのフィラリア感染
猫ちゃんのフィラリア感染経路はわんちゃんと同様、蚊です。
完全室内飼いの猫ちゃんでも迷い込んできた蚊に耳や目回りの、毛の薄いところを蚊に刺されることがあります。
猫ちゃんでも感染する可能性はゼロではありません。
しかし注意すべきなのが、猫ちゃんはフィラリア症に対する治療法が確立されていないことです。
そのため、「予防こそが唯一の防御手段」というのが現実です。
また、猫ちゃんのフィラリア症は診断も難しく、レントゲンや血液検査でも確定できないことが多く、見逃されやすい病気です。
そのため、感染してしまった場合は突然死や呼吸困難など重篤な症状として初めて気づくケースもあります。
フィラリア症の予防方法
猫ちゃん用のフィラリア予防薬は滴下薬とチュアブルタイプが主流です。
滴下薬は首の後ろあたり(本人が舐められない箇所)の毛を分けて皮膚に直接滴下します。
食の好みに左右されず投与できるのはありがたいですよね。
そして滴下薬の種類は豊富で、ノミ、マダニ、シラミ、耳ダニ、回虫、条虫、鉤虫など一緒に駆除・予防したいものによってお薬を選択することもできます。
皮膚につけるだけでご自宅でも簡単にできるので猫ちゃんにとっても飼い主さんにとってもストレスになりにくいところがいいですよね。
チュアブルタイプは飲むと3ヶ月効くものがあり、年に2回ほどの投薬で済むので毎月の投薬がわずらわしく感じる方にはおすすめです。
但し、フィラリア予防薬は市販されておらず、動物病院での処方が基本です。
体重に合ったお薬を動物病院で処方してもらいましょう。
予防期間はお住いの地域により異なりますが、一般的には5月〜10月が予防期間になります。
まとめ:室内猫でもフィラリア予防は「必要」です。
「猫にフィラリア予防は必要なの?」という疑問を持つ方は多いですが、結論から言えば――必要です。
たとえ完全室内飼いであっても、蚊の侵入リスクはゼロではなく、たった1匹の蚊がフィラリア感染を引き起こす可能性があります。
そして猫は、犬よりもはるかにフィラリアに弱く、たった1匹の寄生で命に関わるケースもあるのです。
さらに、猫のフィラリア症は治療法がなく、診断すら難しい病気です。
症状が出たときには手遅れ、ということも十分ありえます。
だからこそ、フィラリア予防は「必要かどうか」ではなく、「するべきケア」として考えてほしいのです。
動物病院で処方される予防薬は安全性も高く、毎月1回のケアで大切な猫の命を守ることができます。
元動物看護師の経験から言えるのは、“命に関わる病気が予防できるのであれば、やらない手はない”ということです。
これを読んでくださった方が、少しでも「やってみようかな」と思ってくだされば嬉しいです。
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