【猫の寿命を延ばすコツ】元動物看護師が解説

暮らしとお世話

猫ちゃんと暮らしていると、

「ずっと一緒にいてほしい」

「少しでも長生きしてほしい」

大切な家族だからこそ、そう願わずにはいられませんよね。

飼い方次第で寿命に差が出るとしたら、今日からできる小さな心がけが、愛猫の未来を大きく変えるかもしれません。

  • 長生きする飼い方ってあるの?
  • 寿命はどれくらい?
  • 動物病院の活用方法は?
  • 健康寿命を延ばすためにできることは?

この記事では、元動物看護師としての経験も踏まえ、愛猫と少しでも長く幸せに暮らすためのヒントをやさしくわかりやすくご紹介します。

 猫の平均寿命は?

ペットの猫の平均寿命

愛猫と長く一緒に暮らしたい――それはすべての飼い主の願いです。

では、実際に猫ちゃんはどれくらい生きる動物なのでしょうか?

2024年一般社団法人ペットフード協会調べによると、

猫ちゃんの平均寿命は15.92歳です。

▼参考リンク(外部サイト)

https://petfood.or.jp/pdf/data/2024/3.pdf

この数字は、ペットとして“人の管理下”(室内外問わず)で暮らしている猫ちゃんのデータです。

野良猫ちゃんの寿命も合わせての平均となるとぐんと下がります。

完全室内飼いの猫の寿命と特徴

完全室内飼いの猫ちゃんに限定すると平均寿命は16.34歳と高くなり、17歳〜20歳を超える猫ちゃんもめずらしくありません。

完全室内飼いは、次のようなメリットがあります。

  • 交通事故や外敵(カラス、野良猫など)とのトラブルがない
  • 感染症(猫エイズ、白血病など)のリスクが激減する
  • 温度管理された室内で、体調を崩しにくい
  • 飼い主が体調変化に気づきやすく、早期に治療できる

また、近年は「猫を完全室内飼いにすること」が推奨されており、動物病院や保護団体からも広く呼びかけられています。

これは猫ちゃんの寿命が延びた一番大きな要因です。

自由に外出をする猫の寿命と特徴

家の外と中を自由に出入りする“半外猫(放し飼い)”の平均寿命は、14.24歳前後とされています。

筆者が病院に勤め始めた20年前は、自由に室内外を行き来する猫ちゃんがたくさんいました。

特に年配の飼い主さんは昔ながらの“半外飼い”をしている方が多く、“完全室内飼い”への理解はなかなか得られませんでした。

そしてそのような家庭で育った子ども世代も同じ意識を持ちがちで、意識を変えるのは並大抵のことではありません。

ある地域の取り組みで、小学生を対象に猫ちゃんの室内飼育の大切さを伝える活動が行われました。

“大人の意識を変えるのは難しいけれど、こどもにその意識を持ってもらうことでその意識が上の世代まで波及する”という、大きな結果に繋がりました。

長い年月をかけて啓発活動を行ってきた動物病院や保護団体、各機関の苦労が実を結び、20年経った現在は、完全室内飼いが主流となっています。

人の意識が変わることが猫ちゃんの寿命に影響するというのは、人の責任の大きさを痛感します。

外を自由に出歩く猫ちゃんたちには、以下のようなリスクがあります。

  • 交通事故に遭う可能性が高い
  • 他の猫や動物とのケンカによるケガ・感染症
  • いたずら、虐待
  • 異物・毒物誤食・中毒
  • フィラリア、ノミ、マダニなど寄生虫の感染
  • 体調を崩しても気づきづらい

交通事故死は外に出る猫ちゃんの死因のもっとも大きな要因です。

実際に筆者が病院に勤務していたとき、外に出る猫ちゃんが事故で命を落とすケースに遭遇する機会は少なくありませんでした。

そのときの痛ましさはなかなか忘れることができません。

そして飼い主さんの心の痛みを思うと心が締め付けられる思いでした。

そんな経験を誰にもしてほしくありません。

野良猫の寿命

野良猫ちゃんに限っては、交通事故や感染症、喧嘩などのリスクが非常に高いため、寿命が大幅に短くなり、約3〜5歳と言われています。

子猫時代がもっとも過酷で、交通事故やカラスやオス猫などの外敵の存在により、多くの猫ちゃんが子猫のうちに命を奪われてしまいます。

人の目が行き届いている猫ちゃんと、野良猫ちゃんとでは、こんなにも寿命に差があるのは驚きです。

猫ちゃんの寿命は「暮らす環境」によって大きく左右されるということはいかに外での暮らしが過酷かということがわかります。

平均寿命が延びている理

昨今の猫ちゃんは、かつてよりもずっと寿命が伸びています。

筆者が動物病院に勤めたばかりの頃は「猫ちゃんは10歳を過ぎたら高齢」と言われていましたが、今では15〜20歳以上生きる猫ちゃんは珍しくありません。

その背景には、飼育環境や医療技術の進歩など、いくつかの明確な理由があります。

動物医療の発展と飼い主の意識向上

動物病院での医療サービスが高度化し、下記のような治療や検査が身近になりました。

  • ワクチン接種
  • 年1〜2回の健康診断
  • 血液検査・エコー・レントゲン検査
  • がんや慢性疾患の早期発見・治療

また、「猫は我慢強い動物」と言われるため、症状が見えづらいケースもありますが、飼い主の意識が高まり、小さな異変に早く気づいて動物病院に連れて行く行動も、寿命延伸に貢献しています。

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猫を長生きさせるためにできること

完全室内飼育は絶対!

かつての日本では、猫ちゃんを家の中と外を自由に出入りさせる「半外飼い」が一般的でした。

しかし、現在では「完全室内飼い」が主流となり、さまざまな外的リスクを避けられるようになりました。

外に出かける猫ちゃんがケガや体調不良で受診した場合、多くの飼い主さんが状況を把握できていないため、原因・治療に辿り着くまでに時間がかかる、というのが実際の診察でたびたび起こりました。

  • 排泄の有無・量・形状がわからない
  • 食欲の有無を判断できない
  • 異物誤食・中毒の原因が特定しにくい
  • 外傷の原因が不明

室内飼いであれば把握できる、当たり前のことが把握できないのであらゆる可能性を考えて検査・治療を進めます。

原因追究や治療方針決定までに時間がかかってしまう場合があることから、

猫ちゃんは“完全室内飼育一択”です!

食事と栄養管理のポイント

昔の猫ちゃんの主食は「人間の残飯」や「煮干し、かつおぶし」など栄養バランスが偏ったものが中心でした。

しかし今は、「総合栄養食」として栄養基準を満たしたキャットフードが豊富にあり、年齢・体質・病気に応じて適切なフードを選べます。

  • 子猫用、成猫用、高齢猫用、療法食などバリエーションが豊富
  • 食事療法で腎臓病や肥満の予防・管理が可能に
  • ウェット・ドライの選択肢も広がった

これらにより病気の進行を緩やかにしたり、予防につながることが長寿に繋がっています。

猫ちゃんの健康と寿命を大きく左右する要素のひとつが「毎日の食事」です。

どれだけ安全な環境で暮らしていても、食事の内容が不適切であれば、病気や早期老化の原因になってしまいます。

ここでは、年齢や体質に応じた食事管理のポイントを解説します。

総合栄養食を選ぶのが基本

市販のキャットフードには「一般食」「間食」「総合栄養食」などの種類がありますが、主食として選ぶべきは「総合栄養食」です。

総合栄養食とは、猫ちゃんが水と一緒に与えられれば必要な栄養素をすべて摂れるように設計されたフードのこと。

これを毎日与えることで、栄養バランスの崩れを防ぎ、内臓疾患や骨・筋肉の衰えなどを予防できます。

水分摂取も寿命に直結

猫は元来、砂漠で暮らしていた動物のため、あまり水を飲まない傾向があります。

しかし、水分不足は腎臓や膀胱に大きな負担をかけ、尿石症や慢性腎不全の原因になります。

【水分摂取を促す工夫】

  • ウェットフードを取りいれる
  • 流れる水(自動給水機)を使用する
  • 水皿の材質や設置場所を変えてみる
  • 水の設置箇所を増やす
  • ウェットフードのスープ部分を水に混ぜる
  • を入れる

室内飼いならこれらの管理がしやすく、水分摂取を促す環境を整えやすいのもメリットです。

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避妊・去勢後は肥満に注意

避妊・去勢手術をした猫ちゃんは、ホルモンバランスの変化により太りやすくなります。

◎肥満は糖尿病や関節炎のリスクを高めるため、次の点に注意しましょう。

  • 避妊・去勢手術後専用のフードを使う
  • 活動量に合わせたカロリー調整
  • フードを目分量ではなくきちんと計量する
  • 定期的な体重チェック
  • おやつを控える
  • おやつを与える場合はおやつのカロリー分、主食を減らす

肥満予防は、長寿のための第一歩といえるでしょう。

手作りごはんは要注意

「手作りごはん」は愛情のこもった選択肢ですが、栄養バランスを崩しやすいため注意が必要です⚠

特にカルシウム・リン・タウリン・ビタミンAなど、猫ちゃんが必要とする栄養素を過不足なく配合するのは非常に難易度が高くなります。

どうしても手作りをしたい場合は、獣医師やペット栄養管理士の監修を受けて、栄養設計されたレシピを参考にしましょう。

定期健診と予防医療の重要性

猫ちゃんは体調の変化を隠すのが上手な動物です。

そのため、「元気そうに見える」=「健康」ではないという認識が必要です。

定期健診のススメ

猫ちゃんも人間と同じく、年に1回の健康診断を受けることで、病気の早期発見に繋がります。

【定期健診で行う主な検査内容】

  • 身体検査(触診、体重、視診など)
  • 血液検査(内臓機能や貧血のチェック)
  • 尿・便検査(腎臓や膀胱の状態、消化機能など)
  • エコー・レントゲン(高齢猫や体調に応じて)

特に7歳を過ぎたあたりから健診を意識すると、腎臓病や心疾患の早期対処につながります。

ワクチン接種も「予防医療」

完全室内飼いであっても、ワクチン接種は重要な健康管理の一環です。

なぜなら、

  • 人の衣服や靴からウイルスを持ち込むことがある
  • 他の猫と接触する機会(ホテル、病院など)もゼロではない

代表的な予防接種には以下があります:

  • 3種混合: 猫ウイルス性鼻気管炎・カリシウイルス・汎白血球減少症
  • 5種混合 :上記+猫白血病ウイルス・猫クラミジア など
  • 猫エイズワクチン

病院では猫ちゃんの生活環境や年齢に応じた接種プランを提案してくれるので、年1回の健康診断とあわせて相談するのがおすすめです。

高齢猫ほど「未病」の管理が重要

高齢になると、明確な症状がなくても「なんとなく元気がない」「食欲が落ちている」などの未病(みびょう)状態が増えてきます。

これを放置せず、こまめな健診で原因を探ることが、猫ちゃんの快適な老後と長寿を支えます。

ストレスを減らす住環境づくり

猫ちゃんにとって「安全で快適な住まい」は、健康寿命を延ばすために欠かせない要素です。

特に室内飼いでは外的な危険が少ない分、「室内の質」が猫ちゃんのストレスに大きく影響します。

ストレスを減らすための工夫

1. キャットタワーや棚で「縦の空間」を確保

ネコ科の動物はもともと、高いところから獲物や外敵を観察する習性があります。

高いところに登れるだけで、猫ちゃんの安心感は大きく変わります。

2. 隠れ家スペースを設ける

クローゼットの中、ベッドの下、ドーム型ベッドなどの、身を隠せて落ち着ける場所があると、来客や大きな音の時も安心して過ごすことができます。 

ここに入っているときは触らない、などのルールを家庭内で決めておきましょう。

3. トイレは清潔&複数設置

猫ちゃんにとってトイレ問題はストレスに直結します。

静かで落ち着ける場所にトイレを設置し、いつも清潔に保つことが猫ちゃんのストレス軽減にとても重要です。

そしてトイレの数もとても重要です。

トイレの設置数は「頭数+1個」が理想。

4. 窓から外が見える場所を用意

室内にいても、外を観察できる「日向ぼっこスペース」や「猫窓台」は、精神的な刺激になります。

外が見える位置にキャットタワーや高めの棚を設置し、自由に外を観察できる環境を作ってあげましょう。

5. おもちゃで適度な運動と刺激を

猫ちゃんは狩り遊びが大好きです。

母猫が狩りの仕方を教えるために、子猫に生きた虫やネズミを与えます。

動くものを追ったり、じゃれたりするのは猫本来の本能です。

追いかけっこができる猫じゃらしや、電動おもちゃ、知育トイなどで運動不足と退屈の解消に役立てましょう。

生活音・来客・家族との関わり方

生活音への配慮:掃除機・テレビ・洗濯機などの大きな音が頻繁な環境では、静かな「避難部屋」を用意すると安心です。

来客時の対応:知らない人が来るとストレスになることも。無理に抱かせたりせず、猫ちゃんのペースに任せましょう。

家族との距離感構いすぎもストレスになります。猫ちゃんの性格や年齢に応じた「ちょうどいい関係性」が大切です。

温度・湿度管理も忘れずに

猫ちゃんにとって快適な

温度は20〜28℃前後、

湿度は40〜60%程度とされています。

特に幼猫と高齢猫は体温調整が苦手なため、冷暖房器具やブランケットで補助しましょう。

ストレスチェックのサインとは?

以下のような行動が見られる場合、ストレスを感じているかもしれません。

  • 毛づくろいのしすぎ(ハゲができる)
  • 粗相(トイレ以外で排泄する)
  • 食欲低下または過食
  • 攻撃的
  • 隠れるようになる
  • 鳴き続ける

このような変化に気づいたら、環境の見直しや、動物病院での相談をおすすめします。

猫年齢を人間に換算すると?

猫ちゃんの年齢は人間の年齢とは成長スピードがまったく異なり、特に子猫期は非常に早く成長します。

【猫の年齢を人間の年齢に換算すると】

  • 1か月 約1歳
  • 3か月 約5歳
  • 6か月 約9〜10歳
  • 1歳 約18〜20歳
  • 2歳 約24歳
  • 3歳 約28歳
  • 5歳 約36歳
  • 7歳 約44歳
  • 10歳 約56歳
  • 13歳 約68歳
  • 15歳 約76歳
  • 18歳 約88歳
  • 20歳 約96歳

※この換算はあくまで目安です。

まとめ|室内飼いで猫はもっと長生きできる

猫ちゃんの平均寿命は年々延びており、今では完全室内飼いの猫の寿命は15歳以上が一般的、20歳を超える長寿の猫ちゃんもめずらしくありません。

その背景には、室内飼育による安全性の高さ、栄養バランスの取れたフードの普及、動物医療の発展、そして何よりも「猫を家族として大切にする飼い主の存在」があります。

完全室内飼いにすることで、感染症や事故のリスクを大幅に下げ、ストレスの少ない生活を確保することに繋がります。

さらに、毎日の食事・排泄・体調の変化にも気づきやすくなり、早期の病気発見と予防ケアがしやすいという大きな利点があります。

そして、猫ちゃんの年齢に応じた環境や食事の見直し、定期健診、ストレスの少ない住環境の工夫が、健康寿命を延ばすカギになります。

猫ちゃんの一生に寄り添い、最後まで愛を注ぐことで、「幸せな猫生」を一緒に作っていきましょう。

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